低温科学研究所 生物適応研究室

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院生・卒業生の声

「私たちの研究室に入ってみてどうでしたか?」を卒業生に聞いてみました。

No1: 卒業生 修士入学/M2/北海道大学水産学部卒業

当研究室に入る前

私は北大水産学部出身で、学部生のときは、海藻の環境応答について研究していました。しかし、実験上、陸上植物の研究内容を参考にすることが多かったため、修士課程へ進学する時に、陸上植物の光合成分野で顕著な研究業績を上げ続けている当研究室を選びました。特に学生による論文投稿が盛んであったことに強く惹かれました。決して、札幌でのキャンパスライフだけが魅力的だったわけではありません(笑) (編集注:水産学部は函館キャンパス)

当研究室に入った後

初めはとても厳しい研究室だと思っており、修行するつもりで当研究室に入りましたが、 実際は全くイメージしていたものとは違いました。陸上植物のバックグラウンドがない私にも丁寧に指導をして下さるので、実験がブラックボックス化せず、スムーズに進める事ができます。さらに、私のような修士一年の新入りの意見もしっかりと聞いてくださり、研究テーマや実験方針も先生と相談したうえですが、自分のやりたいことをさせてもらえます。

院試や就職活動との両立が心配なあなたへ

院試内容は英語だけであったため、生物学専攻でなくても、むしろ文系でもチャレンジできると思います。また、就職活動については、当研究室では事前に先生と相談することで、研究との両立が可能です。そのため就職活動中の数ヶ月間、私は実験のストレスを感じることなく就職活動に専念することができました。

卒業に向けて

修士(光合成・藻類)

行きたい企業から内定をもらえた今、私は修士課程で2本論文を投稿する事を目標に研究をしています。死角はありません!

2013.06.12

No2: 卒業生 修士入学/M2/三重大学生物資源学部共生環境学科卒業

当研究室に入って

私は学部では農業機械の世界にいたため、植物科学や分子生物学はズブのど素人でしたが,先生方は「バックグラウンドが違う方がおもしろい」と、実験時にはつきっきりでプロトコルだけでなく背景知識も含め教えて頂きました。

本州出身者からみた札幌の魅力

私は神奈川県の出身です。本州出身者からみた札幌の醍醐味は“目にも鮮やかな四季の移ろい”ではないでしょうか。寒い寒いと言われていた北海道.いざ来てみると過ごしやすい環境です。もちろん冬は一面銀世界になるので外を歩く時に寒い思いをすることもありましたが,本州の冬と比べてそんなに違うとは思いません。そしてなんといっても雪.冬にきちんと雪があると四季の移ろいがはっきりとします。札幌に来て以来,“四季”を意識することが増えました.冬に雪があるのはいいものです.雪について驚かされたのは,新雪を歩くとムギュムギュッとなること.そしてそのやわらかさです.夜のうちに降った雪は朝真っ白に光り,その上を歩くとなぜかワクワクして顔がほころんでしまいます。

クリックすると写真が拡大されます。(写真撮影:佐藤智明)

そしてそんな冬に負けない程いい時期なのが春から夏にかけての時期。この時期も札幌で生活することの楽しみの一つだと思います。街路樹の根本に色とりどりの花々が植えられ,札幌の中心に位置する大通公園は都心にある芝生であり,北大内にはポプラを始め様々な木々植物が根付いています。その植物たちが4月の雪解けの時期から芽吹き始め,5月には気持ちいいほど葉を茂らして街中にいても四季の移ろいが身近にあります。そして5月から6月は気候もよく,外を歩くと心地よい風のせいでお昼寝をしたくなってしまうほど清々しい生活を送ることができます。

クリックすると写真が拡大されます。(写真撮影:佐藤智明)

秋のことをすっかり忘れていました。一年を通して食べ物が豊富で美味しい北海道ですが,その中でも秋は周りの雰囲気もあってかより一層おいしく感じます。夏がそれほど熱くないため,本州のように秋の気候のありがたさを感じることは少なくなりましたが,街中が少しずつ冬支度をしていくのは見ていてホッコリします。寒い時期に向かっているのに暖かさを感じる不思議な感覚に浸れます。

札幌永住へ向けて

修士(光合成・藻類)

そんな札幌が大好きになってしまった私は札幌永住を試みて公務員を目指しています。実験系の研究室だと勉強と実験の両立が難しい点ですが,当研究室の先生方は話を聞いてくださるので,先生と交渉して勉強の時間を確保できています。話に聞くと勉強する時間を確保できない研究室もあると聞くため,ありがたい限りです。

2013.06.12

No3: 卒業生 博士課程入学/D3/同志社大学大学院工学研究科工業化学専攻化学工学コース修了

当研究室に入ったわけ

僕は工学部出身で、修士課程までは藻類からの有用物質の生産に関する応用研究(培養条件の検討など)を行っており、日本語ですが論文も1報、書かせてもらいました。しかし、修士までの研究をより発展させるためには、藻類の光合成に関する基礎的な内容や、藻類の遺伝子組換えに関する技術の習得が必要と考え、応用研究から基礎研究の世界に移ろうと考えました。
 というのが一つの理由なのですが、実はもう一つ利用がありまして、僕は北大で行われているCoSTEP(Communication in Science & Technology Education & Research Program)にどうしても通いたいと考えていました。CoSTEPとは、様々な活動を通して大学の研究者と社会をつなぐための科学コミュニケーターを養成する教育プログラムです。(詳しくはコチラを参照ください。)そのため、北大の中から修士までの研究に関連している研究室を探し、当研究室の門を叩きました。

田中歩先生はこんな僕を快く受け入れてくださりました。まったくの異分野出身でしたので、修士課程から入り直し、1から学ぶことも考えていましたが、博士課程からでいいとのことでしたので博士課程から入学させて頂きました。

入ってからこれまで

研究室に入ってからは、異分野から移ってきた僕にも丁寧に指導してくださりました。また、僕がこれまでに築いてきた技術をなるべく活かすことができるように研究内容を考慮してくださっています。そんな先生方の丁寧な指導に応えるべく、僕は月曜~金曜の朝9時から夜10時までを日課としています。周囲からは「修行僧」とひかれていますが・・(笑)。
 ですので、異分野から移ってきたにもかかわらず、2年間で英語論文を1報出させていただくことになり、さらに、その論文は研究者が選ぶ週のベスト論文「Paper of the week」に選ばれた時は、素直に本当に嬉しかったです。

また、研究と並行してCoSTEPの活動も1年間継続して行っていました。CoSTEPの活動は基本的には週2回ですが、忙しい時にはさらに時間を割くこともありました。しかし、そんな場合でも歩先生は僕を咎めることもなく、CoSTEPの活動に参加させてくださいました。(もちろん時間があるときには休日関係なく研究は行っていました。)そのため、CoSTEPの活動であるサイエンスカフェ等のイベントの開催やPCゲームの作成なども無事に終えることができ、研究との両立も行うことができました。
 ちなみに、CoSTEPのような教育機関は、現時点で日本には北大にしかありません。そのため、全国から社会人も含め、様々なバックグラウンド、年齢層の受講生が集まります。新聞記者、広報関係者、主婦、獣医、研究者etc。科学コミュニケーターを目指す多彩な受講生と出会えること、それもCoSTEPの大きな魅力の一つです。

研究者と社会をつなぐ

博士(光合成・藻類)

将来的にはCoSTEPで学んだことを活かしたいと思いながら、現在は2本目の論文に向けての研究に励む毎日です。札幌にはいつまでいるか分かりませんが、いる間に低温研の院生仲間と、北海道最高峰の旭岳を制覇しようと思っています。

2013.06.12

No4: 卒業生 修士入学/M2/長岡高専卒業

高専から大学院へ

私は高専出身で、大学という組織は初めての経験です。大学での研究環境は高専よりも恵まれており、アウトプットはより厳しく求められます。そのため実験に対する取り組み方等の根本的な所まで違い、入学当初は苦労しました。しかし先生や先輩方の優しくも熱い指導により、実験結果を多く出せるようになりました。(個人的な話ですがYFPが光った時は感動しました。)このような経験は大学院でなければできなかったと思います。

博士を目指す「ゴロリ」

修士(光合成・藻類)

また、私は博士課程進学を考えているので、昼間の実験量だけでは足りないと感じ、夜中にも実験をすることが多々あります。ですから、生活リズムが崩れてしまい、とうとう夜型人間になってしまいました。周囲の方々からは「今日は何時に来たの?」と言われる毎日で、あだ名は「ゴロリ」です....。しかし、伊藤助教が朝4時に出勤してくださるので、楽しく実験できています!

2013.06.17

No5: 卒業生 博士課程入学/D3/鳥取大学農学部修士課程卒業

当研究室に入るまで

僕は、修士まで鳥取大学農学部にいました。博士課程から田中歩研究室に所属させてもらいました。

鳥取大学にいた頃から現在まで、約6年間ずっと、葉っぱの緑色の色素「クロロフィル」について研究しています。鳥取大学の修士までは、栄養が少ない環境において、植物ホルモンと葉っぱの色の関係について調べていました。僕の行った実験の一部が論文に掲載されたり、何度も学会発表できたりと満足していました。

ただ、博士課程に進学しようと決めたときに、新しい環境で研究がしたいと考えました。光合成の研究がしたかったこと、葉っぱの色素がとてもきれいだったこと、修士までに田中研のクロロフィルに関する論文をたくさん読んでいたこと、そして指導教員の先生と伊藤助教が知り合いであったことから、この研究室訪問をしました。研究室訪問の際、田中歩教授から研究内容の説明を受け、即座にこの研究室に入りたいと思いました。博士後期試験を受けて、今に至ります。

当研究室に入ってから

田中研に所属してから、3年目に入りました。1年目に、何とか1つの研究をまとめることができました。2年目からは、新しい研究課題に取り組んでいます。個人的に、この研究課題は難易度Sだと思っており、絶対に難航すると思っていました。予想通り、研究開始からトラブルが連発しました。油田を掘り当てるような感じです。そうこうして、時間だけが過ぎてゆきました。めげずに実験を進めていくと、ひとつの実験の結果に出くわしました。この実験結果、つまり、研究課題のてがかり(?)を得ることができました。真夜中にこのてがかりを見つけた時の胸の高鳴りは、これまでに味わったことのないものでした。現在、このてがかりをもとに、不安と希望を持ちながらさらに研究を進めています。

こうして、苦労しながらも研究がスムーズに進行するのも、この研究室の先生と環境のよさに尽きると思います。 とにかく田中歩教授をはじめとして、先生方がとてもすごいと思います。研究のアイデアがユニークで、どの研究も魅力に溢れています。実験に行き詰った時の先生からのアドバイスは、的確でこれまでに何度も救われてきています。また、田中研には、先生が4人もいます。学生の数に対して、教員の数が圧倒的に多いのでとても丁寧な指導してくれます。それに学生や先生の立場関係なく活発な議論がいつでもできます。

また、非常に恵まれた環境で研究を行えています。基本的に、田中研では、ほとんどの実験は実験室内で完結することができると思います。僕の場合は、論文を1報告することができましたが、実験室内設備ですべての実験で完結できました。また、共焦点顕微鏡やMSなどの研究室にない機器は、低温研究所内、あるいは大学内の共通機器設備を利用することができるので、いかなる研究をスムーズに行えることができます。さらに、スタッフの方は、学生の体調をいつも気にかけてくださるので、身体的サポートもばっちりです。

研究しつつ教員免許の準備も

博士(光合成・藻類)

現在、研究を行いつつ、教員免許の修得のために授業を受けています。なぜ、今さら教員免許の準備なのか。それは、「将来の選択肢」を増やすためです。そもそも教員免許を修得したいと考えたのも、この研究室での活動が大きく関係しています。博士1年の秋頃から、1年間「未来の科学者養成講座」のチューターのアルバイトをしました。この講座は、未来の研究者の卵を育てるという目的で、高校生が1年間大学の研究室に通い、研究を行うというものです。チューターとして、1年間高校生の人と接して、苦く辛い体験の方が多かったと思います。でも、「人にものを教える」ということは、ものすごく大変だけど、やりがいがあって感じました。自分の将来の選択肢の中に、「教師」というものが芽生えました。

研究と教員免許の準備は大変ですが、弱音を吐いても何も始まりません。ただ、両立できるように頑張るのみです。

2013.06.19

No6: 卒業生 2010年3月博士課程修了

当研究室での5年間

私は修士課程から博士取得までの5年間田中研でお世話になりました。5年間過ごしてみての私の印象ですが、田中研ではとにかく先生方が学生に親身になって接してくださります。忙しい時でも研究に関するディスカッションの時間を設けてくださりますし、実験や論文書きの指導も事細かに行っていただきました。かといって先生方から研究に対しての圧力を受ける事もなく、5年間本当に楽しく充実した研究生活を送らせていただきました。

私は博士課程卒業後、大学での研究者の道を選びました。私は良い研究者に必要なのは、(1)研究を生み出す力、(2) 研究を行う力、(3) 研究を仕上げる力、だと考えています。田中研ではその3つ全てを学び身につけることができます。

(1) とにかく田中研の先生方は研究に対する発想が柔軟で、“面白い”研究を考えだされるのでいつも感心していました。このような先生方と日々研究に向き合っていく事で、自然と研究を生み出す力は身に付いてきます。
(2) 田中研は、研究を行う環境に関しては素晴らしいの一言につきます。とにかく研究機器が豊富です。田中研から出される論文は研究室内ですべて完結したものも多く存在します。また、研究費が豊富なため学生が提案する研究であっても、快く行わせていただく事が多いです。そのため学生は卒業時に多くの実験技術を身につけて出て行きます。
(3) いくら良い研究を行っていても、論文として仕上げ世に出さないことには意味がありません。田中研では、田中歩教授が研究室を立ち上げてから100報近くのSCI論文を出版してきました。日本の大学の植物系研究室で、このような研究室は数えるほどしか存在しません。田中研には、これだけ多くの論文を仕上げてきたノウハウが存在します。それを実際に先生方から学べることは学生にとって素晴らしい経験です。

ところで、研究室を選ぶ上で最も重要なのは何でしょうか?答えは人によって違うと思いますが、私は「恩師との出会い」であると考えています。これは、自分の研究生活に大きな影響を与えるにも関わらず、自分の努力で変えられるものではないからです。私は田中研でそのような恩師に出会えた事に本当に感謝しています。これから大学院を考えている皆さんへ。田中研に限らず、興味がある研究室があれば実際に訪問して先生方と良く話をする。それが良い研究室を探す上で重要だと思います。

現在

私は田中研を卒業後(2010年3月卒)、韓国のソウル大学農学部Nam-Chon Paek 研究室の方で博士研究員として働き始めました。私が現在所属するPaek研では、田中研でも行っている葉の老化遅延が起きる植物「ステイグリーン植物」の単離が積極的行われています。そのようなステイグリーン植物は収穫量の増加が期待されており、実際Paek研でも収穫量の増加するイネのステイグリーン体を数種単離しています。私はPaek研で、田中研で学んだ「葉の老化」の知識および解析技術を十分に生かす事ができ, そのおかげで今はPaek研の「葉の老化」に関連する研究の全権を任されています。

卒業生(光合成・藻類)

現在は研究教授 (Research Professor)という立場で、自身の研究およびPaek研の学生の研究の指導を行っています。学生の研究の指導を行い、共に実験をし、1つの論文を仕上げていく。この過程は一人で実験しているよりもはるかに大きな充実感を感じる事が出き、やりがいを感じています。個人的には葉の老化及びその周辺領域の研究で世界的にも認知される研究者になりたいと考えています。自分の目標のために、そして一緒に研究を行っている学生さんのために、日々精進していきたいと思います。

2013.06.24