メッセージ
大学院入学を検討中のあなたへさまざまな大学、学部・学院からの入学を歓迎しています。
植物は何故成長し大きくなれるのか?この生物学の基本的な疑問に解答を与えたのは光合成の研究でした。植物は土の中の栄養で大きくなるのではなく、水と光から糖を合成し成長することを巧妙な実験によって明らかにしたのです。以来、多くの研究者が光合成に興味を持ち、その精緻な構造や多様な機能を明らかにしてきました。
このように、比較的独自に発展してきた光合成研究は、近年、他の植物科学に留まらず、生態学や地球科学、工学、農学など多くの分野との関連を深めてきました。また、食糧問題や地球環境問題など、光合成研究に対する社会的な期待も高まっています。私たちの研究室では、光合成の仕組みや、環境適応、進化、バイオマスへの応用などの研究に取り組んでいます。多くの若い学生が私達の研究活動に加わり、この魅力的な課題に取り組むことを期待しています。多様なバックグラウンドを持つ人が研究室に加わることで、私たちの研究領域は広がり、新たな研究領域でも具体的な研究成果に結びついています。私たちは、さまざまな大学、学部・学院からの入学を歓迎しています。
修士課程からの入学を検討中のあなたへ
私たちの研究室では様々な大学や学部から修士に入学してきます。そのため、入学当初は、研究の遂行に必要な知識や技術を持たないことがほとんどです。しかし、その一方、修士2年間での研究成果はほぼ例外なく(卒業後に)国際的な学術論文になっています。これは、これまでの院生の頑張りに加え、スタッフ当たりの学生の数が比較的少なく、1人1人の状況に合わせた柔軟な指導が可能なことが大きな要因でしょう。例えば、研究の意義や研究のアプローチの妥当性、プロトコールの意味など、わかってやるのとそうでないとでは、本人の楽しさが変わってくるはずです。その結果として、私たちの研究室の院生は自分の研究を最後まで責任感を持ってやり遂げて卒業していきます。最後まで責任感を持って粘り強くやり遂げることは、本人の将来のため、非常に大事なことであると考えています。
一方で、田中研では平日の9時(10時)ー17時(18時)までがおおよそのコアタイムで、それ以上の決まりはありません。またその運用もかなり柔軟です。実験系の研究室としては決まりごとが少ない方ではないでしょうか?特に最近では、本人のキャリア志向も様々ですから、将来設計に応じて1日の過ごし方も変わってきます。それに柔軟に対応する必要もあるからです。もちろん、研究室にいる時間はしっかりと研究することが大前提です。
院試についての詳しい内容は環境科学院のホームページの学生募集要項に掲載されていますので、ご覧ください。 また、院試について不安な点や不明な点がありましたら、どうぞお気軽に問い合わせてください。
博士課程からの入学を検討中のあなたへ
博士課程から研究室を変えることは一般的に大きなリスクです。3年間で博士号取得に値する研究を行い、しかも論文が採択されるかどうか、新しい人間関係や雰囲気に馴染めるかどうか、これまでの勉強や研究が無駄になってしまうのではないか…。そのため、研究環境や研究テーマを変えたいと思っても決断できないことが多いのではないでしょうか。
私たちも博士課程から入学される方には、まずリスクを理解しているかどうかを確認しています。しかし、その覚悟を持って入学される方は大歓迎です。実際、過去に分野が異なる学生を何人か受け入れてきましたが、彼ら自身の努力の甲斐あって、3年以内に論文をまとめ、無事に博士号を取得しています。また、お互いの技術や知識を融合することによって、まず研究効率が上がりますし、研究の可能性も広がります。しかし、何よりも、異なる分野や経験を活かした試行錯誤の結果として、思いもしない方向に新たな研究領域が広がってきたことが研究室の、そして本人の研究の大きな柱になってきました。
また、私たちの研究室では本人の努力を前提とし、同時にスタッフも責任を持って、3年以内の博士号の取得を目標にしています。実際、博士号取得を目指す学生のキャリアは多様化し、アカデミックポジションを目指す人だけでなく、様々な形で社会への貢献を目指す人が増えています。このような時代にあっては、D2の冬の段階で論文投稿できる状況でないと、就職活動の際に大きな支障が出てしまいます。つまり、1年半で研究(の一部)をまとめることが必要です。なお、一旦結果をまとめることで、逆説的に、その後の研究の発展が飛躍的に進歩することも珍しくないようです。幸運なことにこれまでは(頭の下がるような)本人の努力と周囲のサポートが実を結び、この方針が守られてきました。
私たちの研究室の特徴の1つはスタッフ(助教3人)の充実にあります。スタッフ1人に対して学生はせいぜい3ー4人です。そのため、学生1人1人に合わせたサポートが可能です。また、研究の中心に「光合成」もしくは「クロロフィル」があるため、全ての研究がどこかでリンクしています。そのこともあってか、研究室ではスタッフ学生を問わず、研究テーマを超えて、日々精力的に意見交換が行われています。これにより、異なるバックグラウンドを持つ人でも、知識や技術、考え方や哲学を自然に、楽しく、しかも効率的に吸収することができます。
もし博士課程から入学を考えている方がいましたら、いろいろと不安をお持ちと思いますから、ぜひ気軽に相談、遊びに来てください。研究室への加入にあたって、知識は前提としません。研究テーマも本人とよく相談しながら、本人のバックグラウンド、私たちの研究室の研究の蓄積を活かすことで、短期間でその努力が実りやすいものを提案できるように、スタッフ一同努力しています。リスクよりも可能性を信じられる方、覚悟を持って努力できる方はこれまでの研究経歴を問わず大歓迎です。
異なるバックグラウンドを持つあなたへ
20世紀は化学と物理の時代と言われています。では、21世紀は?
実は、21世紀は生物学の世紀になると言われています。なぜでしょうか?実は、生物学は今、大きく変わろうとしているのです。
生物学が大きく変わるきっかけは、大量のゲノム情報が容易に手に入るようになったことです。DNAシークエンサーの性能が飛躍的に向上しつつある現在、ゲノムを調べることは難しいことではなくなりつつあります。同時に、生体内のRNAを網羅的に調べる「トランスクリプトーム」、タンパク質を網羅的に解析する「プロテオーム」、代謝産物を網羅的に解析する「メタボローム」研究などが発展しつつあり、大量の生物情報が容易に手に入る時代になりました。
このような時代に必要なのは、いわゆる「ビックデータ」を扱うための「データサイエンス」の素養です。しかし、残念ながら、多くの生物専攻の学生はその素養がなく、ビックデータの前に立ち竦んでいるのが現状です。一方、私たちの研究室ではコンピュータが好きな学生や工学部出身の学生が中心となって、ゲノム情報を用いたタンパク質の探索ツールを作製しました。また、現在も研究室独自の手法を用いたタンパク質複合体データベースを構築中です。
思い起こせば、分子生物学の黎明期には物理学を専攻した研究者が活躍していました。また、生物研究のブレークスルーのきっかけが新しく開発された機器であることも決して珍しくありません。田中研では常に研究の中心に「光合成」や「クロロフィル」がありますが、その周縁部分には、他の学問領域との境界領域には、広大な可能性が広がっています。
私たちの研究室に入るにあたって、光合成やクロロフィルに関する専門知識は前提としません。むしろ、これまでの人生に培った知識や技術や考え方が田中研のそれと融合することで、新しい研究の方向性を見出していけたらと思いますし、これまではそういう幸運に恵まれてきました。次の生物学を創るのはあなたかもしれないのです。
藻類を研究してみたいあなたへ
現在、藻類を用いた有用バイオマス生産を目指す動きが世界中で活発化しています。これは化石燃料をエネルギー源とした社会は持続不可能であるという反省から、バイオ燃料、とりわけ農業と競合しない藻類を用いたバイオ燃料をエネルギー源とすることで持続可能な社会を目指そうという取り組みです。また藻類の利用はバイオ燃料に限らず、ベータカロテンやアスタキサンチンなどの、藻類由来の有用物質は化粧品やサプリメント等に用いられていますし、大量培養可能なクロレラやユーグレナ(ミドリムシ)は栄養価が高く食品としても利用されています。
私たちの研究室では、古くから藻類を研究に用いてきました。これは光合成生物にとって必須なクロロフィル代謝の進化や多様性を調べることで、光合成生物の進化を知る大きな手掛かりが得られると考えているためです。実際、この視点からいくつもの個性的な研究が生まれてきました。さらに、近年、藻類ゲノムの解読が飛躍的に進み、「灰色藻」、「紅藻」、「褐藻」、「緑藻」にそれぞれゲノムが解読された「モデル藻類」が存在します。私たちの研究室ではそれら「モデル藻類」の培養と研究を進めており、今後の研究の発展を楽しみにしています。
また、現状では藻類を用いたバイオマス生産を直接的に目指した研究は行っていませんが、きっかけがあれば、今後チャレンジしていきたいと考えています。藻類に興味がある人、大歓迎です。
北海道に戻りたいあなたへ
田中研には、大学で他の県(内地)に出たものの、北海道(札幌)の良さを再認識して戻ってきたメンバーが少なくありません。
北海道大学は日本を代表する総合大学ですし、地元の人々にとても愛されている大学でもあります。札幌駅から徒歩5分と抜群の立地にありますから、札幌近郊であれば実家からの通学も十分に現実的です。一人暮らしをする場合でも、この立地にありながら、他の大都会では考えられないほどリーズナブルな賃貸マンションが豊富にあります。住み慣れた土地で安心して研究してみてはいかがでしょう?
一度は北海道で暮らしてみたいあなたへ
「札幌の二度泣き」という言葉をご存じでしょうか?これは、札幌に転勤が決まると、遠く都から離れて北の地に飛ばされる寂しさに泣き(一度目)、逆に、札幌から帰る頃になると札幌の人々の温かさ、住み心地の良さを失う寂しさで泣く(二度目)ということを表す言葉です。実際、「住みたい街ランキング」でも常に上位の札幌は非常に魅力的な都市です。 その魅力を少し考えてみても、家賃の安さ、食の美味しさ、豊かな自然、適度な都会、夏の涼しさ…。なお、スギやヒノキ花粉がとても少ないことは花粉症の人に大変喜ばれますし、虫が少ないこと、特に某黒い虫がいないことも一部の人には大変好評です。
また、北海道大学は札幌駅から徒歩5分と抜群の立地ですが、それでも家賃は安いため道外からの学生の多くは大学近辺に住んでいて、学生向けのお店も充実しています。札幌の観光地としても愛されている北海道大学は、イチョウ並木やポプラ並木など四季折々の風景が楽しめる場所です。大学構内の広さと豊かな自然には多くの人が驚くのではないでしょうか?校内には原生林!もあれば、古くは縄文時代からの遺跡もあります。構内でキタキツネを見ることもあって、散策は楽しいですよ。
冬の寒さや雪の多さが気になります?実際には札幌は建物や暖房に様々な工夫があって室内はとても暖かいです。(実は道民は寒がりです)それに、道路の除雪もしっかりしていますから、日常生活ではそれほど不便はありません。札幌駅-大通公園は地下道でつながっていますから、冬の買い物も快適です。北海道的には札幌はそれほど寒くないですから、服装と滑りにくい靴さえ準備すれば外歩きも大丈夫ですよ。 遠いですか?でも、新千歳空港までは札幌駅から40分弱。羽田空港まで1時間半。距離はともかく、時間的には意外に近いです。新千歳空港は便数も多いですし。最近ではLCCもありますから、移動のコストも相当に下がってきました。
道外から当研究室に来た学生・スタッフの多くは札幌の暮らしに(期待以上に!)満足しています。札幌の暮らしで不安な点があれば、いつでも相談してくださいね。
北大生のあなたへ
私たちの研究室は北海道大学の附置研究所の1つ「低温科学研究所」に所属しているため、毎年、4年生が新しく研究室に配属されるということはありません。そのため、田中研における北大生の比率は決して高くありませんでした。しかし、その数は多くない北大生は、その異なるバックグラウンドを活かして、研究室の可能性を広げてくれています。その貢献度は決して小さなものではありません。私たちの研究室に興味のある方はいかなる学部学科の方でも大歓迎です。いつでも気軽に見学に来てください。
社会人のあなたへ
日本の大学では以前に比べて社会人ドクターが減ってきています。しかし、欧米圏では博士号の価値が日本に比べて非常に高いこと、急速にグローバル化が進んでいることを考えると、現在ではむしろ博士号の価値は上がってきたと言えます。また、産学連携が盛んなアメリカではそこから大きなイノベーションが起こった例は珍しくありません。
私たちの研究室ではこれまでにも社会人ドクターを受け入れた経験があり、その方は目覚ましい成果を上げ、新聞などのメディアで報道されました。研究室では実験の計画を立て、実験を遂行し、結果をまとめて学会で発表し、論文を書くことがすべて期待されます。さらに、その際、英語で論文を読み書きし、ディスカッションすることが求められます。私たちは結果や知識だけでなく、その過程もきっと良い経験になるのではないかと考えています。一方で、社会人の方の仕事の進め方や仕事に対する責任感や使命感などから研究室の学生やスタッフが学ぶことも多く、お互いにWin-Winの関係を結ぶことができると考えています。
もし、社会人ドクターに興味のある方、研究室の研究に興味のある方がおられましたら、気軽にお問い合わせください。