なぜクロロフィルを分解しなければならないのか
樹木は落葉する前になぜクロロフィルを分解するのでしょうか?
下の図はLHCIIと呼ばれているタンパク質と色素の複合体です。
すべての陸上植物はこの複合体を光合成に使っています。
灰色の部分がタンパク質です。
水色がクロロフィルa、緑色がクロロフィルb、黄色がカロテノイドです。
葉がクロロフィルを分解する理由は二つあります。
一つ目の理由はタンパク質を分解するためです。
樹木は落葉する前に灰色で示してあるタンパク質部分を分解してアミノ酸を幹のほうに回収します。
しかしクロロフィルが付いたままだとタンパク質分解酵素が働くことができません。
そのためクロロフィルをまず分解して、タンパク質部分にタンパク質分解酵素が作用できるようにします。
もう一つの理由は活性酸素ができるのを避けるためです。
光合成装置に組み込まれたクロロフィルが光を吸収するとそのエネルギーは光合成に使われます。
分解の始まった光合成装置ではクロロフィルは吸収した光エネルギーの使い道がありません。
その場合そのエネルギーを酸素に渡して活性酸素ができ、細胞を傷つけてしまう恐れがあります。
しかしアミノ酸を回収するまでは細胞を健康な状態に維持しなければなりません。
そのためにクロロフィルを分解しています。
このように、クロロフィルを分解する最終的な目標は光合成装置のアミノ酸を回収することです。
なお、クロロフィルの分解産物は養分としては再利用されず、落葉とともに失われているようですが、詳しくはわかっていません。
また、カロテノイドは光を吸収しても活性酸素を作らないため分解する必要はありません。